死者を埋めると蘇る土地の謎が判明する?
本作は2019年版『ペット・セメタリー』の前日譚にあたる作品とのことで、これを観れば、あの「埋めた死体が蘇る邪悪で不思議な土地」の謎が明らかになるのではないかと期待して鑑賞しました。
ちなみに私は1989年版は鑑賞済みですが、2019年版のリメイクについては未見です。
あっ、モルダー捜査官だ
映画が始まってすぐ、デイヴィッド・ドゥカヴニーが死体を引きずりながら、例の土地に現れます。
この瞬間、思わず「モルダー捜査官、こんなところで何やってるの?」と脳内でツッコミを入れてしまいました。もちろんこれは『X-Files』ではないので、まったくの別人役です。
本作でのデイヴィッド・ドゥカヴニーの役名はビル。常に疲れたような雰囲気をまとったキャラクターで、どうしてもモルダー感が拭えません。
しかし「ビル、あなた疲れてるのよ」と声をかけてくれる相棒は、当然ながら登場しません。
それはさておき、不穏な空気の漂う映画の冒頭にデイヴィッド・ドゥカヴニーが登場すると、刷り込まれたイメージが強すぎて、どうしても強烈なX-Files感が漂ってしまいます。
『ペット・セメタリー』という作品に、この配役は本当に正解だったのでしょうか。
ペット・セメタリーの「ペット」はどこへ?
本作はタイトルこそ『ペット・セメタリー』ですが、今回あまりペットが関係してきません。
正直、「どのあたりがペット・セメタリーなのか、ちゃんと説明してほしい」と思うほど、別の映画を観ている感覚でした。
一応、登場する犬の様子がおかしく、何かしら蘇っているような雰囲気はあります。しかし明確な種明かしはなく、本当にそうだったのかはよく分からないままです。
そんな調子で、「なんだか微妙な映画だな」と思いながら、最後まで鑑賞しました。
邪悪な土地の秘密が、今明かされ……ない?
特別面白いわけでもないけれど、かといって致命的につまらないわけでもない。ホラー映画としてはごく普通の出来です。
だからこそ、「せめて土地の謎が解き明かされる瞬間だけは見届けよう」と期待しながら、画面を見続けました。
そして、ようやく過去の回想シーンに入り、「これで土地のルーツが明らかになるのか」と思ったのですが……
結果はざっくり、「この土地、昔からずっとこんな感じやねん」で終了。
え? それだけ? と唖然。
土地のルーツ、まったく明らかになっていません。これは正直、拍子抜けでした。期待していただけに、かなりあっさり裏切られた気分です。
言ってしまえば、かなりタイトル詐欺に近い印象を受けました。
「ペット・セメタリー」だと思わなければ、なんとか……
本作は――そう、「ペット・セメタリー」だと思って観なければ、まあ普通のホラー映画です。
物語自体は、息子を失った父親が悲しみのあまり禁忌である死者蘇生の地に息子を埋めてしまい、邪悪な存在として蘇った息子が周囲に災いをもたらす、という定番の展開です。
『ペット・セメタリー』シリーズの根幹にあるテーマは、「大切な存在の死を受け入れられない人間の弱さ」です。
禁忌だと分かっていながらも、死者を蘇らせてしまう愚かさと、その代償が描かれてきました。
しかし『ブラッドライン』では、「もう一度会いたい」「土地の力に頼っていいのか」という葛藤の描写が非常に薄いです。
また、シリーズでは象徴的だった「固くて掘り進められない土」――まるで「今なら引き返せるぞ」という土地からの警告のような演出も、本作では省略されています。遺体を埋めるまでの過程があまりにもあっさりしています。
さらに、もし蘇った息子にわずかでも自我が残っているのであればありそうな、「なぜ俺を呼び戻したんだ」と父親を責めるシーンなども一切ありません。
この手の映画で定番とも言える人間ドラマが、ほぼ描かれないのです。
その結果、感情的な盛り上がりもなく、かといってグロテスクな演出や不気味さに全振りしているわけでもない。
結局、何を目指して作られた作品なのか、いまひとつ分からない中途半端な仕上がりになっています。
ただし、「単なる生きる死者ものホラー」として観れば、及第点ではあります。
とはいえ、人におすすめできる見どころを思い出そうとしても、該当するシーンがまったく浮かびません。
まあ、世に出るホラー映画の大半は、こんなものなのかもしれませんが。
『ペット・セメタリー』シリーズをすべて観る、という使命感でもなければ、正直「観ても観なくてもいい映画」です。
評価は「悪い・普通・良い」で言えば普通。
本当に可もなく不可もなく。ただしルーツ系の映画としてはかなり残念。そして、これを『ペット・セメタリー』と呼んでいいかどうかは、かなり微妙なラインだと思います。
