※本記事は鑑賞後の感想につき、物語後半の展開にも多少触れています。
眼鏡型端末視点のPOVホラー
2026年の正月に観た映画その2。
さてこの映画は、主人公サラが着用しているスマートグラス(Google Glassのような眼鏡型端末)越しの映像記録、という設定のPOV(主観視点)形式です。
JeruZalemのZが大文字なのは、Zombieのイメージ?
本来なら『Jerusalem』の綴りを、わざわざ『JeruZalem』にして、しかもZを大文字にしているので、これはまあタイトルの時点でZombie系を意識しているんだと思います。
なら邦題も、もう少し気を利かせて「エルザレム」とかにすればよかったのでは? と考えてしまうのは穿ちすぎですか?
開く『地獄の門』、でもルチオ・フルチ監督は関係なし
ルチオ・フルチ監督も、ダンテの『神曲』も関係ないですが、サラ(主人公:ダニエル・ジェイドリン)とレイチェル(友人:ヤエル・グロブラス)が観光旅行に出かけ、飛行機内で宗教神話や隠秘学に傾倒した若い人類学者ケビン(ヨン・トゥマルキン)と出会い、行き先をエルサレムに変更した所為で悪夢の状況に巻き込まれる物語です。
2人がエルサレム市街を観光している最中に地獄の門が開き、中から超自然的な悪魔めいた化け物が出現。軍が応戦し、サラとレイチェルは街の住人と一緒に生命の危機に晒されます。
冒頭は魅せてくれるが、前半は退屈
要約すると、「記録を漁るとエルサレムでは昔から死者が蘇る事態が何度も発生しており――」というナレーションで始まる冒頭はかなり良かった。
裏で流出しているらしい、鎖に繋がれ、口から血と蛆虫を吐く女性。その女性の背中に突然、堕天使めいた羽が生える――という動画が流れ、期待値が一気に跳ね上がる。
しかし、いざ始まってみると、サラとレイチェルが旅行に出かけ、エルサレム市街を観光するだけで、特に大したことは起こらない。
とはいえ、石畳の地面と迷路のように入り組む街中の様相は、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部のDIO戦の舞台を連想させるので、環境映像としてはとても面白かった。
ただ、本当に何も起きないので、段々退屈してくる。
後半、悪魔めいた怪物登場で盛り上がる
中盤を過ぎ後半に入ったころ、宵闇に包まれ始めたエルサレム市街をサラがホテルの屋上から眺めていると、突如爆発音が響き、状況は一変する。不穏な空気が一気に漂い始める。
作中の設定では、タルムード(Talmud)の記述にある「地獄への三つの門」のうちの一つがエルサレムにあり、今まさにそれが開いたらしい。
ちなみにタルムードとは、ユダヤ教における膨大な「口伝律法(くでんりっぽう)」をまとめた聖典とのこと。雑に言うと、「神から授かった教えを、日常生活でどう守るべきか」というノウハウ集のような記録集です。
避難しようとサラたちが外に出ると、建物越しに、旧約聖書『創世記』に登場するネフィリム(Nephilim)を想起させる巨人――あるいはコーランに登場する「ジャバーリーン(巨人、力ある者)」?――が闊歩するのが見える。それをヘリが攻撃している。
このシーンを観た時は、結構感動しました。画的には完全に怪獣映画です。
そして街中には、ゾンビ化したような風体の人物も徘徊し始める。さらにこいつらは、突然背中に黒い羽が生え、空を飛びます。
おそらく堕天使がモチーフなのでしょう。エルサレムという聖地に、聖書的・コーラン的背景を持つ異形が跋扈し始める。これは非常に唆られる設定です。
ラスト手前でCAVE(ケイブ)系映画に
軍隊が街を包囲したため脱出できなくなったサラたちは、ソロモン王の採掘場の地下洞窟を抜けて街から脱出する手段を取ります。
しかし、この時点ですでにレイチェルは堕天使ゾンビに襲われ、首に傷を負っており、逃走中に血を吐き始める。徐々に意識は混濁し、目が黒くなり、背中から黒い羽が生え……レイチェルも堕天使ゾンビ化しました。
この設定もなかなか良いですね。おそらく菌やウイルス、薬品ではなく、かといって悪魔憑依系とも少し違う、なんらかの呪術的感染によるゾンビ化です。
ありそうで、あまり観ない設定で最高です。こういうのが好きな人には刺さりそうです。
最終的な作品の評価は?
冒頭と後半は非常に面白かったのですが、前半が退屈だったので、それを踏まえて評価すると、「悪い・普通・良い」の三段階なら、良い寄りの普通。
でも、観て損はない作品でした。
