『ヘルハザード・禁断の黙示録/The Resurrected』鑑賞後記録|クトゥルフ神話系映像化作品

2026年1月3日土曜日

クトゥルフ神話系 映画鑑賞後記録

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H・P・ラヴクラフト『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』が原作、1991年アメリカのホラー映画

 まず原作になる『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』が、どんな内容なのかというのを簡単に説明します。

 予備知識として、知っておいて欲しいのは――
※以下は、原作を読んだうえでの個人的な解釈・理解になります。

 16世紀の錬金術師パラケルススが提唱した「三原質(トリア・プリマ)」では、万物は「水銀(精神)」「硫黄(魂)」「塩(肉体)」の3つの原理から成るとされており、このうち「塩」は形を形作る基盤(肉体的な実体)を象徴します。
 そして錬金術では、生物(人間や動物)を焼いた灰に残る成分に、その生命の「本質(エッセンス)」が宿っていると考えられていたということです。

 さて、『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』では、遺体の灰が「特定の塩/Essential Saltes」とされ、この中には生物の肉体のデータが保存されていて、何らかの方法を用いれば、この灰から故人を再び現世に呼び戻すことができることを発見した人物が登場します。
 そして、その方法というのが、過去・現在・未来、あらゆる時間・空間に遍在する外なる神:ヨグ=ソトース/Yog-Sothothの力を借りて行われる「死者蘇生や異次元との接触」に関連する冒涜的な儀式です。

 作中では、遺灰から精製された「特定の塩(Essential Saltes)」に対し、ヨグ=ソトースの力を借りる(呪文で呼び出す)ことで、数百年前に死んだ人間の肉体と精神の情報をヨグ=ソトースの門を通じて「現在」に引き出し、物理的に再構築しています。
 これは原作だけでなく映画の中にも登場しますが、死者蘇生の呪文のなかではっきり、「Y'AI'NG'NGAH, YOG-SOTHOTH(ヨグ=ソトース、イアイ・ンガイ)」と、その名が唱えられます。これは単なる魔法の詠唱ではなく、時空の門を開いて過去の存在を現代に呼び戻すための通信プロトコルのような役割を果たしているのでしょう。


原作に割と忠実な映像化

 実は過去にも『怪談呪いの霊魂/The Haunted Palace』(1963)というタイトルで『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』は映像化されているようだが、原作再現度的には『ヘルハザード・禁断の黙示録/The Resurrected』の方が高いという話を聞く。
 私は『怪談呪いの霊魂/The Haunted Palace』は未見だが、今回『ヘルハザード・禁断の黙示録/The Resurrected』を鑑賞した限りでは、時代設定が現代に変わっている部分を抜きにすれば、ヨグ=ソトースの呪文も出てきたし、たしかにラヴクラフト的な雰囲気は完全再現されていたように感じた。


しかし、ヨグ=ソトースの必要性が薄れてはいた

 監督が『バタリアン/The Return of the Living Dead』(1985)のダン・オバノンだからなのか、『ZOMBIO 死霊のしたたり/RE-ANIMATOR』(1985)の影響なのか、この作品では灰からの死者蘇生は、ヨグ=ソトースの呪文なしで、なぜか作中に登場する「死体蘇生薬(色は蛍光グリーンではない)」をかけるだけで故人が復活する。
 この薬は、ヨグ=ソトースの力を物理的な形に定着させた死者蘇生用の「触媒」だと解釈すれば一応筋は通るが、クトゥルフ神話ファンではなく原作を知らずに観た人には、さっぱりチンプンカンプンだろうと思う。

 原作では、蘇った死者を元の然るべき状態へと回帰させるのは、儀式魔術の退去、召還的な手法だったが、映画では死体蘇生薬を出してしまったので、原作のこの部分は地味すぎるのか未再現に終わっている。
 代わりに、映像的に派手にアレンジされた演出で決着はつく。
 敬虔なラヴクラフト信者であればこのアレンジを否定するのかもしれないが、画的な面白さとそこそこの原作再現度があれば満足な私としては、これはこれで良かったと感じた。


邦題狙いすぎ問題

 この映画の原題は『The Resurrected』で、『復活した者たち』くらいの意味。『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』が原作なら、ちょうどいいくらいの改題です。
 しかし、邦題の『ヘルハザード・禁断の黙示録』はなんなのでしょうか?
 Hellhazard=(ヘル/Hell)地獄の(ハザード/Hazard)危険因子ですか? そして禁断の黙示録とは?
 いや、響きはかっこいいんですが、なんか原題&映画内容と違いすぎませんか? 悪くないんですが、ちょっと狙いすぎです。


映画の評価

 80年代〜90年代初頭にかけての特殊メイク(SFX)全盛期のホラー映画だけあって、実物特撮だけが持つ質感は最高でした。『バタリアン』のダン・オバノン監督らしく、骨が動き肉体が変容するシーンはなかなか目を楽しませてくれるし、ヌチョヌチョドロドロとした蘇生失敗作の登場など、視覚的インパクトは申し分なく、とても素晴らしかったです。
 で、貴重なクトゥルフ神話要素モリモリな映画なこともあり、個人的には「悪い・普通・良い」のなかで「良い」を付けたいです。

 ちなみに、ダン・オバノン監督は、ラヴクラフト『潜み棲む恐怖/The Lurking Fear』の映像化作品『ヘモグロビン/Bleeders』(1977)の制作にも関わっております。

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